民法(時効)
今回は時効について勉強していきます。
重要度は5段階中の3です。
この問題ができればOK
問題①
自己に所有権があることを過失なく信じ土地の占有を開始したがその3年後にその土地の所有権を有効に取得していなかったことを認識したとしても更に7年間占有した場合はその土地の取得時効が成立する。
〇か×か?
問題②
所有権が消滅時効の対象ではないが所有権に基づく登記請求権は所有権から発生した別個の権利となり消滅時効の対象となる。
〇か×か?
問題③
弁済期から10年が経過した賃金債務の債務者が債権者に対して消滅時効を知らずに「支払いはもう少し待ってほしい」と払う意思を示した。善意のため後から消滅時効に気づき援用することはできる。
〇か×か?
◆時効の意義
取得時効・・・一定期間他人の物を占有する人に、その物に関する権利を取得させる
消滅時効・・・一定期間権利を行使しない場合にその権利を消滅させるもの
〇時効の存在理由
・一定期間継続した状態を尊重し、社会秩序を維持
・権利がありながらそれを行使せず放置する者を保護しない
・時間がたつと真実の権利者が誰であるか証明が困難
◆遡及効
時効による権利取得・消滅はその起算日(占有開始日など)に遡って権利を
取得または消滅する。
◆時効の援用
援用・・・時効によって利益を受けるものが時効の利益を受ける意思表示をすること
時効の権利取得・消滅は時効期間が来ただけでは裁判所は認めない。
時効の援用ができるものは時効によって直接利益を受けるものとその継承人のみ
〇時効利益の放棄
時効による権利取得・消滅は時効完成前にあらかじめ放棄することは禁止されている。
例えばお金を借りる際に債務者が「時効による借金返済の債務の消滅はいらないから金利を安くしてよ」と特約を結ぶのはそもそもの時効制度を無視してしまうからである。
◆時効の中断
時効の中断・・・時効が中断されるとそれまでの経過してきた期間はリセットされる。中断の終了で再度0から始まる。
〇時効の中断要因
・請求
債権者が債務者に請求すること。(借金返済を促すなど)
裁判上での請求しなければ中断しない。(口頭では効果は薄い)
・差押え、仮処分
・承認
時効の利益を受けるものが権利を受けないと意思表示をすること
例えば借金返済の時効後、借金を返さなくてもいいのに返すと意思表示すること
【例題】
AはBに借金をしていた。時効が成立しAは借金返済を免れた。しかし、Aはそれを知らずにBに返済すると言った。
⇒この場合、Aは信義則上、時効の援用はできない。
相手方Bを保護するためである。
◆取得時効
〇所有権の取得時効の要件
・動産、不動産ともに所有意思を持って平穏、公然に他人の物を占有した場合
基本⇒20年間の占有が必要
占有のはじめに善意無過失だった場合⇒10年間の占有が必要
占有により権利を取得した場合、前の人の権利(地上権、抵当権など)を取得するわけではない。
◆消滅時効
〇債権の消滅時効
債権は10年間行使しないことによって消滅時効が完成する。
【例題】
AはBに1,000万円を貸付け、弁済日を令和2年7月1日とした場合、令和12年7月1日までAはBに何も請求をしてこなかったときはBは消滅時効の援用ができる
〇その他の権利の消滅時効
債権または所有権でない財産権(抵当権)は20年間使わないときは消滅時効が完成する。
※財産権は消滅時効の対象とはならない。それっぽい理由で財産権が消滅時効になるという樋掛問題に注意。
◆問題の解答
解答①
〇
自己に所有権があることを信じ占有していた場合、善意無過失で10年間、
悪意有過失で20年間で取得時効が成立する。
解答②
×
所有権は消滅時効の対象とはならない。また、登記請求権など「所有権から…」と回答者を惑わすひっかけ問題である。登記請求権などがいちいち対象となるかどうかを覚える必要はない。
解答③
×
債務者が賃金債務の消滅時効に善意無過失であったとしても支払いを承認した場合、消滅時効を理由に賃金債務を免れない。
信義則上の観点から債権者を保護するためである。