民法(意思能力と行為能力)
こんばんは!独学で公務員試験突破を目指しているサラリーマンのウエマルです。
今回は「意思能力と行為能力」というテーマで学習したいと思います。
未成年者など行為を制限されている人たちの法律行為について試験で頻出されますので
5段階中5の重要度となっています。
この問題ができればOK
問題①
AがBにお金を貸していました。Bはその借金を返そうとたまたま出会ったAの高校生の息子Cにお金を返しました。不利益になることはないのでCは受け取った。
次のうち正しいものを選べ
ア、Aは取消できない イ、Bは取消せる ウ、AとCは取消せる
問題②
成年後見人は同意を得ないで不動産などの重要な取引を行った場合は取消せるが成年被後見人の同意を得た場合は取消すことができない。
ア、〇 イ、×
問題③
制限行為能力者が取り消したときは相手方はそれを理由に現に利益を受けている限度で返還すれば足りる。
ア、〇 イ、×
答えはこの章の下部に記載
1.意思能力
意思能力とは自分が行った行為でどのような影響を与えるのか認識できる能力をいいます。意思能力がないものがした行為は無効となります。
例えば、家に金の買取業者が「金を売ってください」と営業に来ました。家には幼稚園児のA君しかおらず、母親の大事な金のネックレスを売ってしまいました。
この場合、金の売買は初めからなかった行為として無効になりネックレスは返ってきます。
2.行為能力
行為能力とはその人が単独で行える能力のことです。
行為能力者とは具体的に次の4つです。
(a)未成年者 (b)成年後見人 (c)被保佐人 (d)被補助人 です。
(b)~(d)の聞き馴染みはないと思いますがまとめて精神障害がある方たちのことを言います。程度の重さで分けられ(b)が最も重い症状です。
制限行為能力者がした行為は取消となります。
※意思能力がない人がする行為は無効、制限行為能力者は取消です。
(a)~(d)の単独でできる行為には各々程度の違いがあります。
できない行為をしたときは原則、取消ができます。一つ一つ見ていきましょう。
未成年者(20歳未満)
単独でできる行為
①「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」(5条1項但書)です。
例えば、知人から家などを貰うことや借金を免除してもらうことです。
「単に…」というところが重要で友達に貸しているお金を返金してもらうことは現金が手元に増えますが貸し付けている権利(債権)が無くなってしまうので単独で行える行為とは呼べません。親など法定代理人は取消そうと思えば取り消せます。
②ざっくり言うとお小遣いを使うことです。
しかし、勉強道具を買うためにあげたお小遣いをゲームに使ってしまった場合は法定代理人は取消すことができます。お小遣いの用途が決められているならその範囲内で使わなければならないです。
③営業許可を受けた営業行為
法定代理人によって許可を得た営業は認められます。
法定代理人の権利
未成年者の法定代理人は「代理権」「同意権」「追認権」「取消権」があります。
追認権は事後に同意することです。
※未成年者の中でも単独で法律行為を行える人たちがいます。男性は18歳、女性は16歳が結婚した時に成人したとみなされ法律行為を行うことができます。
成年被後見人とは精神障害で物事の判断ができないと裁判所に判断された人の中で最も程度の重い部類の人たちのことをいいます。
成年被後見人の法律行為は原則、本人または成年後見人(法定代理人)が取り消せます。
例外を下記にあげます。
①日常生活に関する行為です。
日用品を買ったり、タクシーを使うことです。
②婚姻、離婚、認知(ある子を自分の子供と認めること)などです。
成年後見人の権限
未成年者の法定代理人と同じく「代理権」「取消権」「追認権」がありますが「同意権」はありません。
「同意権」がない理由は成年被後見人が同意したとしてもその通りに行動することが難しいからです。
被保佐人とは成年被後見人よりも症状が軽いが物事を認識する能力が低い人のことをいいます。
成年被後見人の場合と同様で被保佐人の法律行為は本人もしくは保佐人が原則、取消すことができます。
しかし、精神障害の程度が軽いので被保佐人が単独で出来ることのほうが多いです。
下記に主に単独で出来ないことを挙げています。
①不動産の売買や賃貸など
②借金など他人の財産を借りること。またその保証人になること
③資産運用など
身分行為以外の財産に関わる重要な行為が保佐人の同意を得なければできないと覚えておきましょう。
保佐人の権限
「同意権」「取消権」「追認権」「代理権」があります。
被補助人
程度が最も軽い精神障がい者のことです。
成年被後見人や被保佐人とは違い裁判所が補助開始の審判をするには本人の同意が必要です。
3.重要判例
制限行為能力者が嘘をついた場合
制限行為能力者が自分は行為能力がある(成年、後見などの審判をうけていない)と嘘をつき法律行為を行ったときは制限行為能力者が取消をすることはできない。
制限行為能力者を保護するには相手方がかわいそうだからです。
また、「自分は制限行為能力者ではない」と積極的に騙すだけでなく、自分が無能力者であると黙っており、かつ、他の言動とあいまって相手方を誤認させたときも取消はできない。
行為が取り消された場合
制限行為能力を理由に行為が取り消されたが制限行為能力者がその資産の価値を減らしていた場合は今の価値(現存利益)で相手方に返せばよいことになります。
例えば未成年者が古本屋で大事な本を5万円で売ったとします。それに気づいた親は取消すことができますが既に1万円使ってしまった場合は民法上、未成年者は4万円だけ返せばこと足ります。制限行為能力者の保護の観点からです。
解答①ウ
「単に権利を得、又は義務を免れる法律行為」(5条1項但書)は単独で出来る行為ですがお金を返金してもらうことは現金が手元に増えますが貸し付けている権利(債権)が無くなってしまうので単独で行える行為とは呼べません。親など法定代理人は取消そうと思えば取り消せます。
解答②イ
取消せます。そもそも成年後見人には同意権がありません。「同意権」がない理由は成年後見人が同意したとしてもその通りに行動することが難しいからです。
解答③イ
相手方は全額返済しなければなりません。現存利益の返却でことたりるのは制限行為能力者側のみです。制限行為能力者保護の観点からできた法律であるためです。